高精細赤外線画像の解析により新たな解釈が明らかになりました。
当初は出羽国の国司からの書状と考えられていましたが、高精細赤外線画像の解析により陸奥国の国司からの書状であることが判明しました。
さらに木簡表面には20の文字の記載があり、文字の判読はできませんが裏面にも墨書きがあることも判明しました。
西久保遺跡出土の木簡の新たな解釈
(注意)黒太字部分が今回判明部分
文字 |
「陸奥国司牒下野国司 鎮兵死□衆之状不罪□□〔郡郷カ〕」 (陸奥国司、下野国司に 牒す。 鎮兵死□ 衆の状 郡郷を罪せず ) |
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よみ |
むつこくし しもつけのこくしに ちょうす。ちんぺいのし□おおきのじょう ぐんごうをつみせず |
内容 | 鎮兵の死亡が多いことについて、西久保遺跡周辺に留まっていた下野国司と鎮兵に対して、死亡は遺跡周辺の地域に落ち度がない旨を伝えた陸奥国司からの書状 |
年代 | 奈良時代はじめ頃(724年以降)から平安時代はじめ頃(806年) |
寸法 | 長さ29.6センチメートル、幅2.5センチメートル、厚さ1.1センチメートル、樹種マツ |
『続日本紀』や『養老令軍防令』では、各地の国や郡は、衛士や防人の療養や死亡に一定の責務があることが書かれています。
今回の文字判明により、鎮兵も同様の取扱いをしていたことがわかりました。
想定されるストーリー
- 下野国を国司と鎮兵が出発
- 西久保遺跡周辺で鎮兵が死亡
- 下野国司が陸奥国司に鎮兵死亡の書状を作成し、併せて使者を派遣(その間、鎮兵らは西久保遺跡周辺に滞在)
- 陸奥国司からの返答文(今回の鎮兵木簡)
- 下野国:現在の栃木県周辺に設置された国の名前。
- 陸奥国:現在の福島県・宮城県周辺に設置された国の名前。

文字判明による解釈
- 鎮兵制では、鎮兵の死亡は陸奥国府(鎮守府)の管轄と判断され、史実との整合性がある。
- 鎮兵死亡は重要な内容のため、使者の派遣を伴っていた可能性が高い。