建築物及び建築物の敷地について、防災査察や建築パトロール等により建築基準法違反のおそれがあると認められる場合又は違反の有無を確認する必要がある場合には、建築基準法第12条第5項に基づき報告を求めます。
建築基準法
建築基準法は、国民の生命、健康、財産を守るため、地震や火災などに対する安全性(求められる性能)や、建築物の敷地、周囲の環境(市街地の安全、衛生等の確保)などに関する必要な基準が定められています。
建築基準法第12条第5項には、「特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、『建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、建築材料等を製造した者、工事監理者、工事施工者又は建築物に関する調査をした者』に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途、建築材料若しくは建築設備その他の建築物の部分の受取若しくは引渡しの状況、建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況又は建築物の敷地、構造若しくは建築設備に関する調査の状況に関する報告を求めることができる。」と定められています。
対象となる建築物や建築基準法の違反行為等
手続き違反
- 確認申請の申請もれや確認済証の交付を受けずに建築工事に着手すると、「建築基準法第6条」の違反となります。防火地域及び準防火地域においては、床面積が10平方メートル以内の小規模な増築であっても建築確認の申請手続きが必要です。
- 特定工程完了時点で中間検査を受けずに工事を進めると、「建築基準法第7条の3」の違反となります。
- 建築物の建築工事が完了後に完了検査を受けずにその建築物の使用を開始すると、「建築基準法第7条」の違反になります。
用途制限違反
建築物を建てる敷地に定められている用途地域や地区計画、建築協定等の建築物の用途制限に反して建築物を建てると、「建築基準法第48条」等の違反になります。
道路内の建築制限違反
建築物と建築物に付随する門や塀を、道路に突き出して建築・築造すると、「建築基準法第44条」の違反となります。
構造や設備等の実態的な違反
構造規定や建築材料等の仕様に関して、防火規制等に反した材料等を使用すると、建築基準法の違反となります。
建築物の維持保全不全
建築物の耐久性や安全性に著しい障害が発生し、第三者の人命に関わるような事態が発生する可能性のある老朽化や損傷が著しい建築物
是正(改善)指導
建築基準法第12条第5項の規定による報告において建築基準法の違反の事実を確認したときは、是正(改善)指導や是正(改善)計画の提出を求める場合があります。
建築物に関する調査報告(建築基準法第12条第5項)(参考様式)
建築基準法第12条第5項の規定により、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途又は建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況に関する報告を求められた場合に使用する報告書の参考様式。
書類名 | 様式 | 記入例 |
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建築物に関する調査報告(建築基準法第12条第5項) | PDF形式 |
報告を求める書類等
- 経過書
- 建築物調査結果書(法令適合状況調査)
- 公図の写し
- 図面(確認申請に準ずる図面)、敷地測量図、境界確認書等
- 現況の写真
- 建築物の安全性を証明するもの
- その他特定行政庁が必要として求めるもの
建築物調査結果書(法令適合状況調査)
対象となる既存建築物が建築当時(建築確認申請時)の建築基準関係規定等の全部又は一部への適合状況を調査することが基本となります。
確認済証に添付された図書がある場合には、建築当時の建築基準関係規定等に照らして適切かどうかを判断することができます。図書等と現地とを目視又は計測、建築設備等の動作確認により照合し、図書どおりであるか否かを調査します。躯体や仕上材の劣化状況についても記録することが望ましいです。
一方で、確認済証に添付された図面がない場合、又は確認済証が交付されていない場合には、現地で立入りが可能な範囲において、目視又は計測、建築設備等の動作確認による建築物の調査を行います。「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」等を活用した法令適合状況調査を実施する必要があります。
適切に施工されていることの調査方法の基準(構造)
既存建築物の構造が適切に施工されていることの確認は、建築当時(建築確認申請時)の施工資料によることを原則とします。
施工資料が不足している場合には、構造部分種別ごとに定める調査方法等を活用し判定します。
- 「木造住宅の耐震診断と補強方法」の資料編(日本建築防災協会)
- 「耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震診断および耐震改修指針」の実態調査(日本建築防災協会)
- 「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」の精密調査(日本建築防災協会)
違反建築物に対する措置
検査済証交付の実態
特定行政庁(建築主事)・指定確認検査機関における検査済証交付数・完了検査率の推移(国土交通省)

検査済証のない建築物
国土交通省では、既存建築ストックの有効活用や不動産取引の円滑化の観点から、指定確認検査機関等を活用し、検査済証のない建築物について建築基準法への適合状況を調査するための方法等を示したガイドラインを、平成26年7月に策定・公表しました。