令和8年3月号
ゴッホと、震災十五年
三月を迎えました。
寒さの中にも、確かに春の気配を感じる頃です。市民の皆さま一人ひとりにとって、この季節がどんな思いとともにあるのか。そんなことを考えながら、このコラムを書いています。
東日本大震災、そして原子力災害から十五年が経ちました。この十五年という時間は、市民の皆さま一人ひとりに、まったく異なる物語を残してきたのだと思います。当時高校生だった私にも、私自身のストーリーがあります。発災後、着のみ着のまま大学に進学するため上京し、初めて受けた英語の授業で隣になったクラスメートに「福島出身」と伝えただけで、距離を置かれた苦い経験もありました。
私たちの復興の道のりは、決して一直線ではありませんでした。立ち止まり、迷い、時には傷つきながらも、それでも前を向こうとする日々の積み重ねだったはずです。復興とは、特別な出来事ではなく、日常を生き抜く意志そのものなのだと、改めて感じています。
そんななか、2月21日から県立美術館で大ゴッホ展が開幕しました。オランダのクレラー=ミュラー美術館から、世界的な名画が福島に集います。昨年の開催地は神戸。阪神・淡路大震災から三十年の節目の年でした。そして今年は、震災から十五年を迎える福島です。
ゴッホは、生前ほとんど評価されることなく、苦悩の中でも描き続けた画家です。それでも彼は、ひまわりや夜空、身近な風景に確かな光を見いだしました。その作品には、「それでも生きる」という強い意志が宿っています。
今回のゴッホ展には、復興の歩みと、困難な人生を歩みながらも決して創作をあきらめなかったゴッホの生きざまが重なり合うといった、そんな思いも込められているのではないでしょうか。
今、ゴッホの絵画を楽しみに、全国から多くの方が福島市を訪れています。福島市では来場者用の駐車場の確保や市内周遊を促すゴッホ飯などの企画を準備し、ゴッホ展を地域全体で盛り上げています。
この春、ゴッホの作品に触れながら、これまでの十五年を振り返り、そしてこれからの福島市を、市民の皆さまとともに描いていきたい。その思いを胸に、これからも歩みを大切に進めてまいります。

令和8年2月号
考えて、少し長湯
二月を迎え、暦の上では春となりましたが、まだ寒さの厳しい日が続いています。吾妻連峰の雪景色は、凛とした美しさでこの季節ならではの表情を見せてくれています。
市長に就任してから二か月が経ちました。「応援しているよ」「がんばってください」と声をかけてくださる皆さまの言葉に、日々、大きな力をいただいています。式典や行事を通じて市民の皆さまとお話しする機会が増える中で、どのような言葉であれば思いが届くのか、想像力を働かせながら考える時間も自然と多くなりました。
考え事をするとき、皆さまはどんな時間を過ごされますか。私はよく、お風呂に入ります。皆さまのお顔を思い浮かべながら、「この言葉でいいだろうか」「もっと伝わる表現はないだろうか」と考えていると、気づけば長湯になってしまうこともしばしばです。一言一言を大切にしながら、皆さまとともに前へ進んでいきたい。その思いは、日を追うごとに強くなっています。
さて、二月は学生の皆さまにとって、受験シーズンの真っただ中でもあります。不安や緊張の中で、懸命に努力を重ねていることと思います。私自身、受験の頃、先輩から「目の前の紙一枚で人生が左右されると思わなくていいんじゃない」と声をかけてもらい、張りつめていた心がふっと軽くなった経験があります。結果がすべてではなく、自分が選んだ道をどう成功に導いていくか。その姿勢こそが大切なのだと教えられました。
学生の皆さまへ。次の時代を担う皆さまだからこそ、福島の未来を信じ、希望を抱き、力強く歩んでほしいと願っています。その道のりは決して平坦ではありません。だからこそ私自身が最前線に立ち、挑み続ける姿勢を、皆さまに示し続けてまいります。
集中することはもちろん大切ですが、時には少し立ち止まり、例えばお風呂に入りながら、大きな視点で考えを整理する時間も持ってみてください。自分を信じ、最後まで力を発揮されることを、心から応援しています。
寒さに負けず、それぞれの挑戦に向き合う皆さまとともに、私もまた、歩み続けてまいります。