10年後の水道への警鐘
水道事業は、経営に必要な費用を、税金ではなく水道料金でまかなう独立採算制です。
使用者の皆さまに水道水を届けるためには、水道管や配水池などを維持管理する必要があり、このための費用を水道料金でまかないます。
また、水道管の設置や更新、配水池の築造などの施設整備には多大な費用がかかるため、毎年、多くの資金を国などから借り入れ、以後数十年かけて返済しますが、借入金の返済にも水道料金を充てます。
つまり、水道事業の経営は、水道水を届けるために必要な費用に対し、それに見合う水道料金収入を確保することで成り立つ仕組みとなっています。
私たちの生活に欠かせない水道水ですが、1人1日あたりどれくらい使われているのでしょうか。
福島市では、飲み水をはじめ、炊事、洗濯、風呂、トイレなど家庭での使用量と、学校、事業所などの使用量を合わせると、毎日1人あたり約270リットル(令和6年度水道事業会計決算による)の水道水を使っていることになります。
全国平均の家庭の使用量は、1人1日あたり炊事40リットル、洗濯35リットル、風呂80リットル、トイレ50リットル、洗面その他25リットル、合計で約230リットル(2023年3月 厚生労働省「いま知りたい水道」)となっています。

引用文献:2023年3月 厚生労働省 医薬·生活衛生局 水道課「いま知りたい水道」より
このように、上下水道局はこれまで、生命に関わる最も重要なインフラとして、毎日1人あたり200リットルを超える安全安心な水道水を、使用者の皆さまに安定して届けてきました。
しかし、今、福島市の水道事業は様々な課題を抱えており、蛇口をひねれば、いつでも必要なだけ、水道水が出てくる「当たり前」が揺らいでいます。
このままいくと、近い将来、福島市が誇る安全でおいしい水を、これまでと同じように届けることができなくなるかもしれません。

「当たり前」を揺るがす最も大きな課題
課題1 老朽水道管の増加
道路から勢いよく水が噴き出したり、大きく陥没し水浸しになっていたりする映像を、テレビや新聞などで目にします。
そのようなことが起こる原因の一つが、古くなった水道管です。
老朽化した水道管に、ヒビが入ったり穴が開いたりすると、漏水が発生します。
漏水は、水を届けることができなくなるだけでなく、時には大規模な事故に繋がります。

福島市内で発生した漏水の様子
このため、古くなった管を、新しい管に更新しなければなりませんが、高度経済成長期に拡張した管路が、今、更新時期を迎えているため、規模がとても大きく、多大な費用がかかります。
令和6年度末時点で、福島市の水道管の総延長は約1,610キロメートルですが、この内、法定耐用年数40年を超えた水道管が約320キロメートル(20%)、令和7年度以後10年間で耐用年数を超える水道管が約510キロメートル(32%)となっています。
法定耐用年数を超えたら、すぐに使えなくなるものではありませんが、全体の半分以上の水道管が、令和16年度末までに更新の対象となっています。

縦軸:延長(キロメートル)、横軸:布設年度(西暦)
課題2 水道料金収入の減少
近年、人口減少や節水機器の導入が進んでいることから、水道料金収入は減少の一途をたどっています。
過去10年間の水道料金収入の推移を見ると、平成27年度約67.8億円(税抜)から、平成28年度には料金減額改定により約2.5億円減収、その後も水需要の減少に伴い約2.5億円減収し、令和6年度は約62.9億円(税抜)となっています。

過去10年間の水道料金収入の推移
単位:億円(税抜)
令和8年度から10年間の水道事業の指針、「ふくしま水道事業ビジョン2026」に基づき試算した財政見通しから、今後も水道料金収入の減少は続く見込みです。
このまま水道料金の減収が続くと、数年後には、老朽水道管の更新に必要な投資財源(※年度末繰越財源)を確保できなくなります。
相反する1と2の課題は、福島市に限らず、全国的に同じ状況です。
※年度末繰越財源とは、老朽水道管の更新など施設整備の収支不足を補てんする財源です。水道料金収入による各年度の純利益と、現金支出を伴わない減価償却費がこの財源の基となります。

老朽水道管の更新事業費(左軸)と年度末繰越財源(右軸)の試算
単位:億円(税抜)

給水人口(左軸)と水道料金収入(右軸)の試算
単位:万人、億円(税抜)
収支のバランスをとるため、例えば、収入に見合う事業量に縮小することや、国などから、より多くの借り入れを行うことが考えられますが、それらは根本的な課題解決とならず、後世の負担を増やす結果に繋がります。
地域の財産である水道を次世代に引き継ぐため、私たちにできることは何か、今、大きな判断を迫られています。
