東日本大震災や福島県沖地震においては、建築物の天井や窓ガラス、屋根瓦、外壁(外装部材)など『非構造部材』の落下や屋外の建築設備の転倒等による被害が報告されています。
大規模地震の発生により、建築物の倒壊など構造部分の損傷以外にも、屋根瓦、外壁(外装部材)、窓ガラス、天井材といった「非構造部材」における破損や落下などが相次いでいます。
そのため、所有又は管理している建築物について、危険性がないか、目視等での確認や建築士等の専門家に調査を依頼するなど、点検を実施することが望まれます。点検の結果、外壁(外装部材)等に落下の危険性がある場合等は、対策等を講じていただきますようお願いします。
非構造部材
柱や梁(はり)、床などの構造体ではなく、天井材や外壁(外装部材)等、構造体と区分された部材を「非構造部材」といいます。
特に、大規模空間の天井は、「特定天井」といわれ、高所で、かつ、重量の重い大規模な吊り天井は、脱落により大きな被害が生じるおそれがあります。
「非構造部材」には、建築部材のほか、設備機器やエレベーター、家具等が含まれます。
非構造部材による被害
大規模地震の発生時の「非構造部材」による被害には、非構造部材の頭上等への落下や転倒による直接的な人的被害のほかに、避難経路の通行阻害等の二次災害があります。重量の重い部材や破損時に鋭利になるものは、落下等により生命に危険を及ぼす可能性もあります。
- 直接的な人的被害
天井材の落下、家具の転倒によるけが等 - 二次災害
- 避難経路の通行阻害
- ガス・油等の漏れによる出火(火災の発生)等
屋根瓦
地震や強い台風の影響により、住宅の瓦のずれ、脱落、飛散などの大きな被害が発生しています。そのため瓦を屋根にしっかり留付けることが重要であり、令和4年1月1日から瓦屋根の緊結方法(建築基準法の告示基準(昭和46年建設省告示第109号))が改正されました。

外壁(外装部材)
外壁は、年数が経過すると老朽化し、そのまま放置すると外壁の落下等により思わぬ事故が発生するおそれがあります。外装仕上げ材等の劣化状況調査は、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する無人航空機(ドローン)による赤外線調査があります。
点検のポイント
- 下地コンクリートの割れ、錆汁
- 白華現象(石灰質の物質が表面に出る)
- モルタルの浮き、ひび割れ、ふくらみ、はく離、はく落
- タイル・石の割れ、タイルの浮き上がり
- タイル・石目地の劣化、損傷、割れ
- 付属金物(金属)類の錆、腐食、変形、がたつき
特定天井
平成23年に発生した東日本大震災では、比較的新しい建築物であっても、劇場や商業施設、体育館、屋内プール等の大規模空間を有する建築物の天井が脱落する被害が生じ、大切な人命が失われました。
そのため、建築基準法施行令が平成26年4月に一部改正され、天井脱落対策の規制が強化されました。
対象
下記のすべてに該当する吊り天井
- 天井高6メートル超かつ天井面積200平方メートル超の空間
- 天井面構成部材等の単位面積質量が質量2キログラム/平方メートル超
- 人が日常立ち入る場所に設置
主な基準
- 吊りボルトを増やす
- 接合金物の強度を上げる
- クリアランスを設ける

窓ガラス
窓ガラスは、中規模地震でも被害が発生するおそれがあり、鋭い破片のガラスの落下は、室内に居る人や道路を歩いている人を傷つけるおそれがあります。
築年数の古い建築物の「はめ殺しの窓」は、パテや硬化性シーリングが硬化している場合があり、地震の揺れにより割れやすいため、道路又は避難路に面して設置されている場合は、触診等により硬化していないか確認しましょう。
また、危険性の高いガラスは、網入りガラスや合わせガラスに取り替える改修やガラス面に飛散防止用フィルムを貼る等対策をすることが有効です。