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更新日:2023年10月13日
A:1976年にアメリ力のフィラデルフィアのホテルで開催された在郷軍人会の参加者やホテル周辺の通行人などに原因不明の重症肺炎が集団発生し、罹患者221名のうちの34名が死亡したことが報告されました。原因は細菌による感染症でしたが、在郷軍人会のLegion(レジオン)をとって「レジオネラ症」という病名がつけられました。
レジオネラ症はレジオネラ属菌が原因で起こる感染症で、乳幼児や高齢者、病人など抵抗力の低下している人が発症しやすい傾向にあります。
レジオネラ症は、その臨床症状から肺炎型と風邪様のポンティアック熱型に大別されます。
レジオネラ肺炎の典型としては2~10日の潜伏期の後に、発熱、悪寒、呼吸困難感、全身倦怠感、などで始まりますが、咽頭痛や鼻炎などの上気道の炎症症例は少なく、時として重症になる場合もあります。適切な治療がなされないと発病から数日以内に死亡することがあります。
ポンティアック熱はインフルエンザに似た非肺炎型熱性疾患で、悪寒、筋肉痛、発熱などが見られ、多くの患者は数日以内に無治療で回復します。死亡例の報告はありません。
A:レジオネラ属菌は土壌や河川、湖沼など自然界に広く生息しています。実験室ではpH6.9±0.1、36℃前後で最も良く繁殖します。
自然環境では20~42℃で生存しますが、ヒトに対する病原性の強い菌種は35℃前後で最も良く繁殖します。
A:土壌や淡水に生息しているレジオネラ属菌が土ぼこりとともに空調設備のひとつである冷却塔などに入り、増殖した菌が冷却水の工アロゾル(目に見えないような細かい水滴)とともに飛散し、人の呼吸器系に侵入してレジオネラ症を起こすといわれています。
冷却塔以外には、加湿器、給湯設備、循環式浴槽、人工の滝や噴水などが感染源となる可能性もあります。
A:レジオネラ属菌は自然界に広く生息し、私たちの周辺から完全に除去することは非常に難しいです。
レジオネラ症を予防するためには、感染源でのレジオネラ属菌の増殖を防止することが重要となります。そのためには、感染源となる設備や器具の衛生的な管理が求められます。
水道水は塩素による消毒が義務づけられていることから、水道水におけるレジオネラ汚染の可能性は低いです。しかしながら、簡易専用水道に該当しない一部の小規模の貯水槽などのうち維持管理が適正に行われていないために、水道水の滞留による残留塩素の消失や水温の上昇、あるいは藻類等の微生物による著しい汚染がみられる給水系統では注意が必要です。
設計・施工及び維持管理に関するレジオネラ防止対策の基本となる考え方は以下のとおりです。
また、「空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準」(平成15年厚生労働省告示第119号)(以下「厚労省告示」という。)に基づき貯水槽の清掃を行う必要があります。その際、作業者のレジオネラ汚染を防止する観点から、マスク等の防護対策をとって作業することが必要です。
さらに、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という。)に基づく水質検査項目を検査するとともに、感染因子の点数に対応したレジオネラ属菌の検査を行う必要があります。
我が国のホテルや病院などの給湯設備では給湯温度を60℃以上と高く保持し、使用時に給水と混合することにより温度を下げるため、レジオネラ汚染の問題はないと考えられていたが、省エネの気運の高まりとともに事務所ビル等で給湯温度を下げる傾向にあることから、レジオネラ属菌が検出されたとの報告もあります。
設計・施工に関するレジオネラ防止対策の基本となる考え方は給水設備に準じるが、特に循環式の中央式給湯設備の場合には、給湯温度に留意する必要があります。
維持管理については給湯温度の適切な管理、給湯設備内における給湯水の滞留防止を念頭に置いてください。また、厚生労働省告示に準じて清掃を実施するほか、貯湯槽の清掃のみならず配管、シャワーヘッド等の適切な清掃・消毒が必要です。シャワーヘッド内部は湯の滞留がおこり、ぬめりができやすく、レジオネラ属菌に汚染される可能性が高まります。また気泡発生装置には空気取入口があり、土ぼこりと一緒にレジオネラ属菌を取り込む可能性があるため、いずれも定期的に清掃等による管理を行うことが必要です。
さらに、建築物衛生法に基づく水質検査項目を検査するとともに、感染因子の点数に対応したレジオネラ属菌の検査を行う必要があります。
貯湯槽は、60℃以上を保ち、末端の給湯栓でも55℃以上になるような加熱装置を備えることが必要となります。
建築物の冷却水は、空調用冷凍機の冷却に用いられます。冷却水の水温は一般的に10~40℃程度の範囲で、補給水には主として水道水が用いられます。
節水のために補給水量を減らして運転すると有機物質などが濃縮されるので、レジオネラ属菌を含めて微生物の増殖に好適となります。
冷却塔は増殖した菌をエアロゾルとともに空中へ飛散させるので、レジオネラ症防止のために最も注意を払わねばならない建築設備のひとつです。
設計・施工に関するレジオネラ防止対策の基本となる考え方は以下のとおりです。
また、維持管理については下記項目について行うことが必要です。
循環式浴槽とは浴槽水を循環させ、その循環経路に粗大汚濁物を除去する装置(プレフィルタまたはヘアキャッチャ)を設けるとともに、ろ材を充填したろ過器を設置して浴槽水を浄化し、水の消費量と排出量を抑制するものです。
循環式浴槽では、湯が閉鎖系内を循環しているため、これらの微生物が生物浄化方式のろ材表面及びその内部、浴槽、管路系の内壁等に定着し、各種微生物が入浴者の体表等に由来する有機物質を栄養源として増殖します。
このため、汚染と感染を防止するためには、循環式浴槽の使用に当たって、以下の点に留意して設計、設置、及び維持管理を行う必要があります。
なお、家庭で使用される循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)についても、上記を踏まえ維持管理等を行う必要があります。
加湿器のうちレジオネラ症の原因となる可能性のあるものは、超音波方式と回転霧化・遠心噴霧の2方式です。
そのうち、ビル空調機に組み込まれている加湿器については、そこで使用される水が水道水質基準に準じることとされているため、清掃等を行う必要があります。清掃頻度の目安としては、加湿装置の使用開始時および使用期間中は1カ月に1回以上、加湿装置の汚れの状況を点検し、必要に応じて加湿装置の清掃等を実施しましょう。
家庭用の加湿器については、タンクの汚染が起こりやすく、長期間水を貯めたまま放置される可能性が高いため、タンク内に生成される生物膜も保持されやすいです。平成30年には、九州地方の特別養護老人ホームで超音波式加湿器を原因とするレジオネラ症患者が3名発生し、うち2名が死亡しました。
加湿器の使用の際には、タンクの水を毎日完全に入れ替えるとともに、タンクの内面を絶えず洗浄して清潔にしておくことが安全上重要です。
水景施設とは、噴水、池などの人工的に造られた水環境をいいます。近年では、このような施設がホテルのロビー、地下街等屋内に設置される場合も多く、レジオネラ属菌の汚染が報告されています。
汚染防止対策としては、エアロゾルがあまり発生しない水景施設を選択するとともに、風向き等に注意することが必要です。
レジオネラ対策のページ(厚生労働省のホームページ)(外部サイトへリンク)
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